気になる人がお礼を言いながら胸に手を当てた。「心から言ってくれているのかな」と感じたり、大切な話の途中の動作に意味を探したりすることはありませんか。
胸に手を当てるしぐさだけで、誠実さや恋愛感情は判断できません。そう見える印象と、話している内容が事実かどうかは別です。研究の結果と限界を確かめながら、言葉を受け止める方法を考えます。
胸に手を当てた姿が、誠実に見えることはある
Parzuchowskiらの2014年の研究では、胸に手を当てた人物の写真は、両手を下ろした同じ人物の写真より、信頼できる印象として評価されました。別の実験では、その動作をした参加者が、知らないことを認めやすかったと報告されています。
ただし、研究はポーランドで行われており、論文では、その文化で胸に手を当てる表現が誠実さと結びつくことも説明されています。特定の条件での平均的な評価や行動の違いから、日常で見た一人の発言の真偽は判定できません。日本のデートで好意を見抜けるという実験でもありません。
関連する効果が、追試で再現されなかった報告もある
Cantareroらの2017年の研究は、相手を傷つけないための嘘に、胸に手を当てる動作が関わるかを検討しました。最初の79人の研究では嘘を控える傾向が見られましたが、方法を事前登録して行った88人の追試では、その効果は再現されませんでした。
これは2014年の写真の印象評価と同じ実験ではないため、すべての結果が否定されたという意味ではありません。一方で、「胸に手を当てるだけで正直になる」と万能の方法にすることもできません。しぐさを信用の保証にしないことが大切です。
お礼と一緒に見えたときは、言葉へ返事をする
「そう言ってもらえてうれしい。こちらこそありがとう」
胸に手を当てた理由を問いたださなくても、お礼の内容に返せます。相手が「本当に助かった」と言ったことを、まず本人が伝えた感想として受け取れます。
ただし、うれしい印象を持ったからといって、まだ話していない交際への希望まで分かったわけではありません。動作の大きさや手の左右を、好意の点数にする必要もありません。
大切な約束なら、具体的な内容を確認する
「大事にする」「ちゃんとする」といった言葉があっても、何をどうするかは人によって違います。誠実そうなしぐさを答えにせず、必要なことを相談できます。
「ありがとう。予定が変わったときは、分かった時点で連絡してもらえると助かる」
自分が望む行動を具体的に伝える例です。相手ができるかを聞き、その後のやり取りを通じて確かめられます。しぐさがなかった人を不誠実と判断することも避けましょう。
謝罪の場面で見えたら、すぐに許さなくてもよい
胸に手を当てて謝られると、真剣さを感じることがあるかもしれません。それでも、自分の気持ちが整理できていなければ、その場で「大丈夫」と言う必要はありません。
「謝ってくれたことは聞いたよ。まだ考えたいので、返事は少し待ってほしい」
何が起きたか、これからどうしたいかを、落ち着いて話せる時間を取れます。見た目が真剣だからと、同意や許しを急ぐ理由にはなりません。
自分が説明するときも、動作で信用を得ようとしない
研究を知って、意識して胸に手を置けば相手に信じてもらえると思うかもしれません。ただ、しぐさを再現することは、伝えたい内容や事実の説明に代わりません。
分からないことは分からないと伝える、できない約束をしない、返事を考える時間を相手に取ってもらう。こうした具体的なやり取りを選べます。自然に胸へ手が動く場合も、無理に止めたり、意味を演出したりする必要はありません。
関連する動作は会釈する心理、基本の見方はしぐさと心理の関係も参考にしてください。
まとめ|誠実そうな印象と、確かめられる事実を分けよう
胸に手を当てる動作について、誠実さの印象や行動への影響を報告した研究はあります。一方、関連する効果が追試で再現されなかった報告もあり、個人の本心を見抜く方法にはなりません。
お礼には言葉で返し、大切な約束は内容を確かめる。しぐさを証明にせず、自分が納得できるやり取りを大切にしましょう。
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参考資料
- Parzuchowski, M., et al. From the heart: hand over heart as an embodiment of honesty. Cognitive Processing, 15, 237–244 (2014).
- Cantarero, K., et al. White Lies in Hand: Are Other-Oriented Lies Modified by Hand Gestures? Possibly Not. Frontiers in Psychology, 8, 814 (2017).