不安なとき、親しい人と手をつないで少し落ち着いた。そんな経験から「手をつなぐことには、どんな意味があるのだろう」と感じることはありませんか。
親しい相手との手つなぎと、脅威への反応を調べた実験はあります。ただし、誰とでも、どんな場面でも安心できると証明されたわけではありません。研究が示す範囲と、二人が心地よく過ごすための相談を分けて考えてみましょう。
手をつなぐことと脅威への反応を調べた研究
Coanらの2006年の研究では、既婚女性16人が、電気刺激を受けるかもしれない状況で、夫、面識のない男性実験者、誰とも手をつながない条件を経験しました。夫と手をつなぐ条件で、脅威に関連する脳活動の低下が報告されています。
参加者が少なく、満足度の高い結婚生活を送る女性を対象とした実験です。この結果だけで、性別や関係を問わず同じことが起こるとは言えません。
110人の追試では、恋人以外の関係も調べられた
2017年のCoanらの研究では、23〜26歳の110人が参加し、結婚、同棲、交際、友人という関係の相手が含まれました。電気刺激の脅威がある状況で、親しい相手との手つなぎは、主観的な苦痛や関連する脳活動の低下を伴いました。一方、面識のない相手との手つなぎでは、同様の調整効果は観察されませんでした。
この研究でも、日常のデートや、望まない接触の効果を調べたわけではありません。関係の種類による調整効果の違いは見られず、「恋人だから友人より必ず安心できる」と順位づける結果でもありません。
親しい人との接触が支えになる場合を考える資料にはなりますが、手をつなぐことを愛情の証明や、相手を落ち着かせる義務にしないことが大切です。
手をつないで安心したら、どう伝える?
自分の体験として、うれしかったことや助かったことを伝えられます。
「さっき手をつないでくれて、私は少し落ち着けた。ありがとう」
これは自分が感じたことの共有です。「だから不安なときは毎回つないで」と相手の役割を決める必要はありません。相手にも余裕があるか、そのときは何ができるかを相談できます。
不安なとき、手をつないでほしいと頼む例
「今ちょっと緊張しているんだ。少し手をつないでもいい?」
返事を待ち、相手が応じたい場合にだけつなげます。難しいと言われたら、「分かった。少しここで一緒に待ってもらえる?」など、触れない方法を相談することもできます。
相手が不安そうなときには、こちらが勝手につかむより、「手をつなぐのと、そばに座るの、どちらがいい?」と本人の希望を尋ねられます。どちらも望まない返事も尊重しましょう。
つなぎ方より、痛くないか・離せるかを大切に
指を絡めるか、軽く握るか、どちらの手かといった形から、気持ちの深さを測る必要はありません。今回の研究は、つなぎ方を恋愛の段階に分類したものではありません。
「少し力を緩めてもらえる?」「荷物を持ち替えたいから、いったん離すね」
途中で変えても構いません。片方が手を戻そうとしたら、強く握って引き留めず、離せる状態を保ちましょう。歩きにくい場所では、無理につなぎ続けるより移動しやすさを優先できます。
安心しない・つなぎたくない場合も、愛情不足ではない
接触を心地よく感じるかは、そのときの希望や場面によっても変わります。「研究ではよいはずだから」と自分の感覚を否定する必要はありません。
「一緒にいるのはうれしいけど、今日は手をつながず歩きたい」
相手を大切にする気持ちと、今は触れたくない気持ちは両立します。詳しい理由をすべて説明したり、別の接触を代わりに約束したりする必要もありません。
手をつなぐことを、関係の試験にしない
つないでくれたから交際を望んでいる、離したから冷めた、と一度の動作で結論づけることはできません。また、一度応じたことは、次も同じように応じる約束ではありません。
関係について知りたいことがあるなら、接触への反応を試すより、「これからどんな付き合い方をしたい?」と、その話題を言葉で相談できます。手をつなぐかどうかだけで、互いの希望を代わりに決めないようにしましょう。
短い接触の場面は握手する心理、喜びを共有する場面はハイタッチする心理も参考にしてください。
まとめ|研究よりも、その場の本人の希望を優先しよう
親しい相手との手つなぎが、実験で脅威への反応を和らげたという報告はあります。ただし、誰にでも安心を保証する方法ではなく、恋愛感情を判定するものでもありません。
つなぎたいときは聞く、途中で離してもよい、触れない支え方も選ぶ。二人がその都度選べるやり取りを大切にしましょう。
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参考資料
- Coan, J. A., Schaefer, H. S., & Davidson, R. J. Lending a hand: social regulation of the neural response to threat. Psychological Science, 17(12), 1032–1039 (2006).
- Coan, J. A., et al. Relationship status and perceived support in the social regulation of neural responses to threat. Social Cognitive and Affective Neuroscience, 12(10), 1574–1583 (2017).