「次の休み、私たちはどう過ごそうか」「二人で続けられる方法を考えたい」。恋人との会話では、一人の希望だけでなく、二人のこととして話す場面があります。心理学で研究されている「ウィートーク(we-talk)」は、こうした一人称複数の言葉の使い方に注目します。
ただし「私」を「私たち」に変えれば、恋愛がうまくいくと証明されたわけではありません。この記事では研究から分かることと、主語だけで相手の本気度を判断しないための注意点、会話に応用する際の例を紹介します。
ウィートークとは?
ウィートークは、英語のwe、us、ourなど、一人称複数の代名詞を使う表現を指します。恋人同士では、自分と相手を含む「私たち」「僕たち」「二人」のような感覚を考える手がかりになります。
研究では、こうした言葉の使用が、二人が互いの考えや感情、行動に関わり合う「相互依存」を反映する可能性に注目しています。ここでいう相互依存は、お互いに影響し合うという意味で、一人では何もできないことや、私生活をすべて一体化することを勧めるものではありません。
30研究のメタ分析で分かったこと
Karan、Rosenthal、Robbinsによる2019年刊行のメタ分析では、恋愛関係にある人を対象とした30の研究を統合しました。全体として、本人やパートナーのウィートークは、関係上・個人上の良好な機能と正に関連していました。とくに関係に関わる指標との関連が強い傾向が報告されています。
ただし、一つひとつの研究は同じ状況を調べているわけではありません。論文でも、ウィートークには肯定的な関連だけでなく、否定的な関連を報告した先行研究があることが説明されています。二人を一つのチームとして捉える言葉は、関係を考える材料の一つであり、単独の万能な指標ではありません。
「言葉が原因なのか」は、この結果だけでは決められない
関係が良好だから「私たち」という表現が増える可能性もあれば、その表現が二人の捉え方に関わる可能性もあります。研究チームを紹介した大学の公式解説でも、因果の方向は未解決の問いとして挙げられています。
そのため、「今日から主語を全部変えれば満足度が上がる」と言い切るのは行きすぎです。言葉の回数より、実際に相手の意見や都合を含めているかを確かめる視点として使ってみましょう。
日本語の会話で、単語を数えるだけでは分からない
日常では「次、どうしようか?」のように、主語を言わずに二人のことを相談する言い方もあります。逆に「私たちはこうするべき」と言っていても、一人だけで決めている場合があります。
この記事の例文は、研究上の英語表現を日本語の会話へ機械的に置き換えるためのものではありません。「私たち」という語がないから親密さがない、という判定は避けてください。誰を含めた言葉なのか、どんな場面で話されたかも大切です。
二人のこととして相談する例
以下は協力の余地を残すための会話例であり、効果を検証した介入手順ではありません。
| 場面 | 相談の例 |
|---|---|
| 会う頻度を決める | 「私はもう少し会いたい。二人とも無理のない頻度を相談できる?」 |
| 連絡方法を決める | 「忙しい週でも、二人が安心できる連絡の仕方を考えたい」 |
| 家事の負担を調整する | 「今の分担だと私が疲れている。二人で続けられる形に変えたい」 |
| 予定が合わない | 「それぞれの希望を出してから、今回はどうするか決めよう」 |
例文では「私」も使っています。自分の希望を言うことと、二人の事情を考えることは両立します。最初に自分の困りごとを具体的に伝え、そのあと調整の方法を一緒に探す形でもよいでしょう。
「二人の問題」にしても、責任まで同じとは限らない
例えば、一方が約束を破った場合に「私たちの問題だから」と言って、した側の責任を曖昧にする必要はありません。何が起き、誰が何を変える必要があるかは、別に確認します。協力を促す言葉が、負担を押しつける言葉になっていないかも見てみましょう。
「私」の時間や意見も、残してよい
交際していても、一人で休みたい日、自分の趣味を優先したい時間、相手と違う意見はあります。「私たち」を大切にするために、個人の希望を消す必要はありません。
また、二人で決めることと、相手の予定をすべて管理することは違います。考え方が重なる感覚に興味があれば、共有現実と、恋人との意見の違いを考える心理学も参考になります。
恋人が「私たち」と言ったら、本気のサイン?
一つの単語だけで、相手の交際への意図や将来の希望は確定できません。話し方の癖、話題、誰について話しているかによっても使い方は変わります。
将来のことが気になるなら、言葉を採点する代わりに「今後の付き合い方を、どう考えている?」と本人に尋ねることができます。分かり合えているつもりでも確認が必要になる理由は、透明性の錯覚と、言葉にしない期待でも解説しています。
参考文献・資料
- Karan, A., Rosenthal, R., & Robbins, M. L. (2019). Meta-analytic evidence that we-talk predicts relationship and personal functioning in romantic couples. Journal of Social and Personal Relationships, 36(9), 2624–2651. 論文を読む
- University of California, Riverside (2018). Research affirms the power of ‘we’(研究チームの見解と、因果の方向に関する説明)
ウィートークを、恋人の本気度を当てる暗号にしないことが大切です。自分の気持ちを伝えながら、相手の希望も聞き、二人で相談できているかを振り返るきっかけにしてみてください。