「性格が似ていれば、ずっと幸せでいられる?」「今うまくいっている二人は、これからも大丈夫?」。相性を知りたくなると、将来を見通せる一つの指標が欲しくなることがあります。
けれども、今の関係の評価を説明することと、将来どれくらい良くなるか・悪くなるかを予測することは別の課題です。43のカップル研究をまとめた2020年の分析は、その違いを考える手がかりになります。
43研究をまとめた分析は、何を調べた?
Joelらは、29の研究室で集められた11,196組の恋愛関係にあるカップルのデータを用い、機械学習で「関係の質」に関わる自己報告の指標を比較しました。同じ人たちを時間をおいて調べる縦断研究のデータです。
ここでいう関係の質は、本人が自分たちの関係をどれくらい良いものと感じるか、という主観的な評価です。結婚できる確率や、別れる日を当てる診断ではありません。
関係そのものについての感じ方が、強く関わっていた
関係に固有の指標の中では、相手が関係を続けたいと思っているという認識、相手への感謝や評価、性的な満足、相手も関係に満足しているという認識、葛藤などが、比較的安定した予測要因として挙がりました。
性格や愛着などの個人差も無関係ではありません。ただし、本人が答えた関係固有の情報をすでに使う場合、個人差やパートナーの回答を加えても、予測がさらに良くなるとはいえませんでした。
これを「性格は関係ない」「相手の本当の気持ちは無視していい」と読むのは行き過ぎです。どの情報を、どのモデルに追加したときに予測が改善するか、という分析の結果だからです。
「相手は満足していると思う」は、相手の回答そのものではない
たとえば、自分が「相手も満足しているはず」と答えることと、相手が実際に「満足している」と答えることは異なります。安心しているから相手も満足しているように見えるなど、評価同士が重なる可能性もあります。
研究に出てきた項目をチェックして、「自分には五つ当てはまるから安泰」と判定することはできません。論文は、読者向けの合否基準を作った研究ではないのです。
将来の「変化」は予測しにくかった
この研究では、関係の質が時間とともに上がるか下がるかという変化は、自己報告の変数を組み合わせても、ほとんど予測できませんでした。
現在の満足度に関連する情報が多くあっても、それだけで二人の未来が分かるとは限らないという点が大切です。一方、「どんな方法でも将来予測は絶対に不可能」と証明されたわけでもありません。扱ったデータ、測定方法、観察期間、分析手法の範囲での結果です。
また、関わりが見つかった項目を増やせば必ず改善する、という因果関係を確かめた介入研究でもありません。感謝の言葉を決められた回数伝える、葛藤を一切起こさない、といった処方箋にはできません。
二人で使うなら、診断より「具体的な確認」に
以下は論文で効果が検証された質問セットではなく、研究の読み違いを避けながら話し合うための例です。すべてを一度に聞く必要はありません。
| 広すぎる判定 | 具体的に確かめる言い方 |
|---|---|
| 私たちは相性がいい? | 最近、一緒にいて心地よかったのはどんな時間? |
| 本当に大切にしている? | 大切にされていると感じた行動と、寂しかった場面を一つずつ話せる? |
| これからも絶対うまくいく? | 今の予定や負担で、調整したいことはある? |
| けんかがあるから失敗? | 意見が違ったあと、お互いが話せる状態に戻れている? |
「最近は予定を決めるのが私ばかりで、少し負担だった。次はどちらが提案するか相談したい」のように、場面と希望を分けると、相手の性格全体を採点せずに話を始めやすくなります。返答を急がせず、相手の見方も確かめてください。
性的な満足を「応じる義務」にしない
研究で関連があったからといって、性行為の頻度を増やす必要があるわけではありません。本人の望み、同意、体調、境界線が前提です。断れない状態を作って満足度を高めようとするのは、この研究から導けることではありません。
不安なときほど、予測と判断を分けよう
未来が完全には読めなくても、今の困りごとを具体的に扱うことはできます。「うまくいく証拠を集め続ける」より、困った出来事を一つ挙げ、調整できる行動があるか確かめる使い方が現実的でしょう。
一方で、侮辱や脅し、強制がある場合に、満足度を上げる努力を一人で背負う必要はありません。良い指標がいくつかあっても、困っている事実が消えるわけではないためです。
ストレスを共同で扱う考え方はダイアディック・コーピング、自分の希望と相手とのつながりを考える視点は自己決定理論と恋愛の記事でも紹介しています。
まとめ:研究は未来の保証書にはならない
43研究の分析は、関係について本人が感じていることの重要性と、将来の変化を予測する難しさの両方を示しました。相性を一度で判定する材料にせず、今どんな経験があり、何を確かめたいのかを整理する手がかりとして読んでみてください。
参考文献
Joel, S., Eastwick, P. W., et al.(2020). Machine learning uncovers the most robust self-report predictors of relationship quality across 43 longitudinal couples studies. Proceedings of the National Academy of Sciences, 117(32), 19061–19071. https://doi.org/10.1073/pnas.1917036117