帰り道に同じ店へ寄る、休日の朝にお茶を飲む、通話を終えるときに二人だけの挨拶をする。特別なイベントではなくても、「自分たちらしい」と感じる繰り返しがあるかもしれません。
こうした行動は、関係の研究でリチュアル(ritual:儀式)として扱われることがあります。ここでいう儀式は、宗教的な行事や立派な記念日だけを意味しません。二人が繰り返し行い、そこに二人なりの意味を感じている活動のことです。
リチュアルとルーティンは、何が違う?
どちらも繰り返す行動ですが、リチュアルでは「二人にとって何を意味するか」が重視されます。ルーティンは、必要な作業を効率よく進めるなどの実用的な目的を持つことがあります。
たとえば、同じ「一緒に夕食を作る」でも、忙しい日に家事を分担しているという意味合いもあれば、「週末に近況を話す、大切な時間」と感じる意味合いもあるでしょう。外から見える動作だけでは、二人がどう受け止めているかまで分かりません。
ルーティンが悪く、儀式だけが良いという区分ではありません。生活を回す家事や連絡にも役割があります。すべての行動に特別な意味を付ける必要はないのです。
関係の儀式を調べた研究
Garcia-Rada、Sezer、Norton(2019)は、四つの研究で、恋愛関係のリチュアルと感情、関係満足度、コミットメントとの関連を調べました。
儀式があると報告した人は、ないと報告した人より、ポジティブな感情や関係満足度、コミットメントが高い傾向を示しました。二人の回答を扱った研究では、双方が「自分たちには儀式がある」と認識していることが重要でした。
同じような行動をしていても、二人が意味のある儀式として捉えているか、単に繰り返す作業として捉えているかを区別する必要がある、という結果です。
原著:Garcia-Rada, Sezer, & Norton(2019), Journal of the Association for Consumer Research
「始めれば必ず幸せになる」とは言えない
もともと関係が良い二人だから、意味のある習慣が生まれやすかった可能性もあります。著者らも、儀式と満足度の因果関係には、介入によるさらなる検討が必要としています。
また、四つ目の研究では、想像上のカップルの活動を儀式またはルーティンとして説明し、参加者がその二人をどう評価するかを調べています。実際のカップルが新しい儀式を始め、その後の満足度が改善したと確かめた実験とは区別してください。
大きなイベントより、すでにある小さなことから
研究を再現しようとして、急に特別な行動を増やす必要はありません。まず、今ある繰り返しの中で、自分がうれしいと感じている時間を振り返る方法があります。
- 散歩の途中で、いつも近況を話す場所がある
- 二人で映画を見たあと、それぞれ好きだった場面を話す
- 遠くに住んでいても、無理のないタイミングで同じ番組の感想を交わす
- 月に一度、近所で朝ごはんを食べる
これらは「効果が実証された四つの習慣」ではなく、考えるための例です。費用が高いほど、頻度が多いほど良いという結果でもありません。二人の生活に合っているかが前提になります。
相手も同じ意味を感じているか、軽く尋ねる
自分にとって大切でも、相手には単なる都合で続いている行動に見えているかもしれません。そこで「大切に思っているか試す」のではなく、自分の感じ方を伝えて確かめてみます。
たとえば、「帰りに少し歩きながら話す時間、私はけっこう好きなんだ。あなたはどう?」。「これからも必ずやろう」と先に決めるより、相手の感覚を聞く余地があります。
「好きだけれど、仕事のある日は疲れる」という返答なら、週末だけにする、短くする、別の活動にするなどを相談できます。同じ行動を守り続けることだけが、意味を共有する方法ではありません。
伝える例
- 「月末に近況を話す時間、また取れたらうれしい。今月は余裕がありそう?」
- 「寝る前の通話は好きだけど、毎日だと寝不足になるから、回数を相談したい」
- 「前の習慣が難しくなったから、今の生活で楽しめる形を一緒に考えたい」
儀式が義務や愛情テストになったら
楽しみだったことでも、予定、体調、仕事、家計の変化によって負担になることがあります。休みたいと言えるか、変更を相談できるかも確かめたい点です。
「一回忘れたから愛情がない」「返信の時刻を守らないと罰を与える」といった使い方は、二人の意味を共有することから離れてしまいます。研究も、儀式を守るための監視や強制を勧めてはいません。
準備や費用が片方に集中しているなら、役割や予算を見直せます。大切な時間だからこそ、続けたい人だけが我慢し続ける形にしないことも必要です。
儀式がなくても、関係が悪いとは限らない
研究で平均的な関連が見られたことと、一組のカップルの良し悪しを判断できることは別です。決まった習慣がなくても、お互いの希望を尊重し、必要なときに話し合っている二人もいるでしょう。
他のカップルの習慣を見て焦るより、自分たちが心地よく感じる時間と、負担になっていることをそれぞれ確かめる材料にしてください。
新しい経験を共有する考え方は自己拡張理論の記事で、うれしかった時間を振り返る方法は関係のセイバリングの記事で紹介しています。繰り返し、新しさ、振り返りは、それぞれ異なる視点です。
まとめ
カップルのリチュアルは、繰り返す活動に二人なりの意味があることを指します。関係満足度との関連は報告されていますが、特定の習慣を始めれば必ず改善するという保証ではありません。
すでにある小さな楽しみを言葉にし、相手にも同じ意味があるか聞いてみてください。続けることだけでなく、休むことや形を変えることも、二人で選べます。
参考文献
Garcia-Rada, X., Sezer, O., & Norton, M. I.(2019). Rituals and nuptials: The emotional and relational consequences of relationship rituals. Journal of the Association for Consumer Research, 4(2), 185–197. doi:10.1086/702761