恋人とくだらない話で笑う時間は楽しい。一方で、冗談のつもりの一言が、相手を傷つけてしまうこともあります。「ユーモアがある人なら、恋愛もうまくいく」と、一つにまとめられるのでしょうか。
研究では、どんな笑いを、誰と、どのように共有しているかが区別されています。面白いことを言う量だけでは、二人の関係まで分かりません。
ユーモアと関係満足度をまとめたメタ分析
Hall(2017)は、39の論文・研究報告に含まれる43サンプル、15,177人の結果をまとめ、恋愛関係でのユーモアと関係満足度の相関を分析しました。
ポジティブなユーモアの六つの下位分類は、いずれも満足度と正の関連を示しました。ネガティブなユーモアでは、五つの下位分類のうち四つが、満足度と負の関連を示しています。
また、自分で「ユーモアがある」と答える指標よりも、パートナーからどう見られているかや、二人のやり取りとしてのユーモアを捉える指標の方が、満足度との関連が強い結果でした。
原著:Hall(2017), Personal Relationships
「自分は面白い」だけでは分からない
自分では場を明るくしているつもりでも、相手は困っているかもしれません。逆に、自分は話が得意ではないと思っていても、二人で小さな出来事を面白がれる時間があるかもしれません。
ただし、この分析は主に変数同士の関連をまとめたものです。冗談の種類を変えるだけで満足度が必ず改善する、と実証したものではありません。関係が良いから笑いやすい、という向きの影響も考えられます。
「同時に笑う」行動を観察した研究
KurtzとAlgoe(2015)は、異性カップル71組が「二人が初めて出会ったとき」について話す様子を録画し、自然に起きた笑いを記録しました。
会話の中で二人が同時に笑っていた時間の割合は、関係の質、親密さ、支えられているという評価と正の関連を示しました。他の笑いを考慮しても、一緒に笑うことに固有の関連が見られたと報告されています。
ただし、特定の場面での観察研究です。「何秒笑えばよい」「笑いのタイミングがずれたら相性が悪い」といった基準にはなりません。笑うよう指示して、関係が改善するかを検証した研究でもありません。
原著:Kurtz & Algoe(2015), Personal Relationships
「二人で笑う」と「一人を笑いものにする」を分ける
日常では、冗談の形式より、相手がどう受け止めたかを確かめる必要があります。次の表は研究用の診断基準ではなく、場面を整理するための例です。
| 場面 | 確かめたいこと |
|---|---|
| 二人で見た出来事を面白がる | 相手も無理なく楽しんでいるか |
| 相手の失敗を友人の前で話す | 本人が話題にしてよいと思っているか |
| 外見や仕事をからかう | 嫌だと言われていないか、言いづらい空気を作っていないか |
| 真剣な相談を冗談で流す | 相手は今、笑いより話を聞いてほしいのではないか |
「冗談のつもりだった」は、受け取った人の不快さを消す説明にはなりません。普段は楽しめる話題でも、その日の状況や、人前か二人きりかによって気持ちが変わることがあります。
嫌だったときは、笑って合わせ続けなくてよい
場を壊したくなくて笑うこともあるため、笑顔だけを同意の証拠にしない方がよいでしょう。嫌だった内容を、できる範囲で具体的に伝えられます。
- 「さっきの仕事の失敗の話、人前で言われるのは嫌だった。次から話題にしないでほしい」
- 「冗談のつもりなのは分かったけど、外見をネタにされるのは苦手」
- 「今は笑い話にするより、困っていることを聞いてほしい」
これは相手を笑わせる技術の指摘ではなく、自分がどう扱われたいかの相談です。言ったあとに、相手が話題や行動を変えようとしているかも確認できます。
傷つけた側は、意図の説明より先に受け止める
相手が嫌だったと伝えたら、「そんなつもりじゃない」「前は笑ったのに」と、笑うことを求めないようにします。
たとえば、「人前で話されるのが嫌だったんだね。ごめん。次からその話は出さない」と、分かった内容と今後の行動を伝えられます。必要なら、どこまで話題にしてよいかを確認します。
ただし、相手に細かい禁止リストを作らせる必要はありません。反応が迷わしいときは、自分の面白さの判定を押し通すより、別の話題に移る選択ができます。
面白いことを言おうと頑張りすぎなくてもよい
恋愛のために、会うたびにオチを作ったり、自分を下げて笑いを取ったりする義務はありません。二人で同じ作品を楽しむ、日常の小さな出来事を話すなど、無理なく面白がれる余地があれば十分です。
反対に、笑いが少ない日があっても、それだけで愛情がなくなったとは分かりません。疲れ、体調、話題、表現の個人差などを考える必要があります。研究の集団平均を、目の前の一日の合否判定にしないようにしてください。
会話の「間」も同様に、一つのサインから相性を決められるものではありません。詳しくは会話の返答の間とつながりの記事で説明しています。
繰り返すからかいで困っている場合
嫌だと伝えても続く、断ると怒られる、人前で恥をかかされることが繰り返される場合は、単に笑いの好みが違うという問題だけではありません。我慢して「冗談が分かる人」になることを目標にせず、距離を取ったり、信頼できる人に相談したりすることも考えてください。
まとめ
恋愛とユーモアの研究は、笑いの量だけでなく、種類や二人のやり取りとしての側面を区別しています。一緒に笑う行動と関係の良さには関連が見られますが、笑わせれば必ずうまくいくという因果関係の保証ではありません。
自分が面白いと思うかだけでなく、相手も楽しめているか、嫌だと言えるかを確かめてみてください。二人で楽しむ余地と、笑えないときの気持ちを尊重することは両立できます。
参考文献
Hall, J. A.(2017). Humor in romantic relationships: A meta-analysis. Personal Relationships, 24(2), 306–322. doi:10.1111/pere.12183
Kurtz, L. E., & Algoe, S. B.(2015). Putting laughter in context: Shared laughter as behavioral indicator of relationship well-being. Personal Relationships, 22(4), 573–590. doi:10.1111/pere.12095