恋人がほしいと思う日もあれば、一人の生活を楽しめる日もある。交際中でも、「別れたあとに恋人がいない状態になるのが怖い」と感じることがあります。
心理学の独り身への恐れ(fear of being single:FOBS)は、今、あるいは将来、恋人がいないことへの心配、不安、つらさを扱う概念です。結婚していないことだけを指すわけではなく、交際相手がいる人も対象になり得ます。
誰かとの関係を望む気持ちを否定したり、「一人を楽しめない人はだめ」と評価したりするための言葉ではありません。
「恋人がほしい」「一人になるのが怖い」「今に満足」は別の側面
これらは似て見えますが、同じ意味ではありません。たとえば、今の生活に満足しながら恋人を望むことも、恋人を探したいとは強く思わなくても、将来一人でいることには不安を感じることも考えられます。
Spielmannら(2025)は、恋人がいない人の二つのサンプル(172人と257人)で、FOBS、恋愛関係への欲求、現在の関係状態への満足を比較しました。分析では、三つの尺度は異なる因子として区別されました。
これは、三つの気持ちに重なりがないという意味ではありません。一つの気持ちを尋ねただけで、残りも同じとみなさないことが大切だという結果です。
原著:Spielmann et al.(2025), Personal Relationships
独り身への恐れと、関係の選び方を調べた研究
Spielmannら(2013)は、尺度の開発、交際中の人の追跡、相手のプロフィールを使った検討、スピードデートなどを通じて、FOBSと恋愛関係での判断の関連を調べました。
一連の研究では、FOBSが高いほど、不満足な関係にとどまりやすい傾向や、スピードデートでより多くの相手に恋愛的な関心を示す傾向などが報告されています。
ただし、FOBSと本人が答える理想の条件は、単純に「恐れが強いほど低い」という結果ではありませんでした。希望として答える条件と、実際の相手への関心や行動を区別する必要があります。
原著:Spielmann et al.(2013), Journal of Personality and Social Psychology
なお、この論文には測定方法の記述に関する訂正があります。交際中の人を追った研究では、尺度は「もし恋人がいなかったら」といった条件を付けた交際中の人向けの版だったことが明記されています。訂正情報も踏まえて読んでください。
研究が説明しているのは、集団の傾向
ここから、「怖いと感じる人は必ず良くない相手を選ぶ」「今の恋愛は本当の愛情ではない」とは言えません。関連を調べた結果は、特定の人の気持ちを診断するものではなく、不安を減らせば判断が必ず変わると確かめた治療研究でもありません。
また、「条件を下げた」と人を格付けするための話でもありません。本人が大切にしたい接し方や満足を、関係があるという状態だけのために無理に諦めていないか、という視点で考える方が役立ちます。
自分の不安を、もう少し具体的にする
「一人になるのが怖い」の中身には、違う困りごとが含まれることがあります。次は研究用の診断項目ではなく、整理するための問いです。
- 休日に話す人がいなくなることが心配なのか
- 周囲に恋人がいないと思われることがつらいのか
- 住まいや生活費、日々の手続きなどが心配なのか
- 今の相手と過ごす時間を失いたくないのか
- 将来の暮らしを考えると、見通しが立たず不安なのか
一つに決めなくてもかまいません。「相手が好き」と「生活が変わるのが不安」が、同時にある場合もあります。
気持ちの問題と、生活の問題を分ける
住まいやお金など、具体的な事情がある場合は、「一人でも平気になろう」と気持ちだけで解決しようとしない方がよいでしょう。使える支えや選択肢を確認することが必要な場合があります。
寂しさが中心なら、恋人をつくるかどうかとは別に、友人と話す予定、参加しやすい活動、相談できる相手などを考える余地があります。これは恋人の代用品を探すというより、暮らしの支えを一つだけにしない工夫です。
将来への不安なら、「いつまでに恋人がいなければ失敗」と期限を決めて追い込むより、今確認できることと、まだ分からないことを分けてみます。研究から、誰にとっても正しい恋愛の期限は導けません。
交際中なら「続けたい理由」と「困っていること」を別に書く
「一緒にいて楽しい」「支えてもらった思い出が大切」という気持ちと、「希望を言うと怒られる」「負担が片方に偏っている」という問題は、両方書いてかまいません。
良い面があるから困ることを消したり、不安があるから愛情を全部否定したりせず、調整が可能かを具体的に考えます。続けたい気持ちと満足度を分ける視点は、恋愛の投資モデルの記事でも説明しています。
話すこと自体が怖い、脅しや強制があるなどの場合は、一人で関係を改善する責任を背負わず、信頼できる人に状況を共有することも考えてください。
一人を楽しむことも、恋人を望むことも義務にしない
「自立した人なら恋人を欲しがらない」「恋人がいれば不安は全部なくなる」という二択にする必要はありません。2025年の研究が示すように、関係を望むことと、今の状態への満足や恐れは、分けて捉えられます。
恋人を探す選択も、今は探さない選択も、自分と相手の意思を尊重しながら考えられます。不安を感じる日があっても、それだけで自分の生活や人格が劣っていることにはなりません。
まとめ
独り身への恐れ(FOBS)は、恋人がいないことへの不安を扱う概念です。恋人がほしい気持ちや、今の状態への満足と同じではなく、交際中にも感じる場合があります。
自分や相手を診断する言葉にせず、何が不安なのか、大切にしたい接し方は何か、どんな支えが使えるかを整理する手がかりにしてください。愛情と不安が混ざっていても、どちらかを急いで消す必要はありません。
参考文献
Spielmann, S. S., MacDonald, G., Maxwell, J. A., Joel, S., Peragine, D., Muise, A., & Impett, E. A.(2013). Settling for less out of fear of being single. Journal of Personality and Social Psychology, 105(6), 1049–1073. doi:10.1037/a0034628(訂正情報)
Spielmann, S. S., Trbizan, J. A., Szczesniak, A. L., & Fiedler, S. A.(2025). Pursuing relationships or avoiding singlehood? Differentiating singles’ fear of being single, desire for a relationship, and satisfaction with relationship status. Personal Relationships, 32(4), e70044. doi:10.1111/pere.70044