昨日は「一緒にいてよかった」と思ったのに、今日は少し距離を感じる。「この揺れは、もう好きではないということ?」と不安になることがあります。
ただ、今この瞬間の関係の評価と、普段の関係全体への評価は、同じではありません。心理学では、日々の満足度の変動と、二人の変動がどのくらい連動しているかも研究されています。
ここでは、2025年に発表された研究をもとに、変動があることと、将来の関係がどうなるかを分けて考えます。
「今の満足」と「全体的な満足」を区別する
研究でいう状態的な関係満足度(state relationship satisfaction)は、その時点での関係への評価です。一方、特性的な関係満足度(trait relationship satisfaction)は、比較的全体的な評価を捉えます。
たとえば、「今日は予定が合わず残念だった」と「普段、二人で相談できる関係だと思う」は、異なる時間の幅での評価です。どちらかが間違いとは限りません。
その日の満足が低かったことを無視する必要はありませんが、一回の評価を関係全体の最終判定とする必要もない、という区別です。
593組と150組のデータを使った研究
Schelingら(2025)は、男女カップル593組の複数時点の日記データと、別の150組が一日に複数回回答したデータを用いました。分析計画を事前に登録した研究です。
主に調べたのは、本人の満足度がどれくらい変動するかと、二人の変動がどのくらい同期するかです。「同期」は、点数がまったく同じという意味ではなく、変わり方が連動することを指します。
原著:Scheling et al.(2025), Journal of Personality and Social Psychology
満足度の揺れは、多くの関係に見られた
分析では、個人の状態的な満足度に変動が見られ、一日の中より、日をまたいだ変動の方が大きい結果でした。また、二人の変動には、中程度から高い同期が見られました。
変動が大きいことは、全体的な関係満足度の低さと関連しました。一方で、この研究では、変動や同期が長期的な満足度や関係の安定に関わるという結果は得られませんでした。
「揺れがあるから危ない」とも、「よくあることだから放っておけばよい」とも、単純には読めません。その場での関連と、将来への予測を分けることが大切です。
相手が応じてくれるという感覚も関わっていた
変動に関わる要因として、双方が感じるパートナーの応答性などが挙がりました。応答性は、自分を理解し、気にかけ、必要に応じてくれると感じる側面です。
ただし、「特定の返答をすれば変動がなくなる」という方法を検証した研究ではありません。毎日同じ満足度でいることが、目指すべき基準だとも示されていません。
研究から言えないこと
この結果から、何点上下したら問題か、何日続いたら別れるべきかという、個人向けの線引きはできません。対象は男女カップルで、測定した期間や方法にも範囲があります。
また、満足度の揺れは、愛情の有無、気分の病気、相手の本音と同じものではありません。「今日は楽しくなかった」と感じただけで、心理学の用語を使って自分や恋人を診断しないでください。
揺れが気になるときは、点数より出来事を確かめる
毎日お互いを採点すると、関係を評価し続けること自体が負担になる場合があります。研究の回答方法を、そのまま二人の義務にする必要はありません。
振り返りたいときは、次のように具体的な場面を短く分ける方法があります。これは研究で効果を検証した記録法ではなく、話し合う材料を整理する例です。
- 何があったか:予定が急に変わった、話を途中で遮られた、丁寧に聞いてもらえた
- どう感じたか:寂しい、疲れた、安心した、うれしかった
- 何を相談したいか:連絡のタイミング、休む時間、次の予定
一日を「良い関係・悪い関係」のどちらかにまとめるより、どの出来事が関わっていたかを話題にできます。
二人の評価が違っても、すぐに相性の結論にしない
自分は楽しかったのに、相手は疲れていたということもあります。同じ時間を過ごしても、期待、負担、受け止め方まで同じとは限りません。
「今日は楽しかったよね?」と同意を求めるより、「私は散歩の時間が楽しかった。あなたはどうだった?」と、具体的な感想を尋ねられます。
相手が違う感想を話したら、自分の経験を否定されたと決める前に、どの場面のことかを確かめます。研究で平均的な同期が見られたことは、いつでも二人が一致しなければならないという意味ではありません。
繰り返す困りごとは、「揺れだから」と片づけない
一時的に残念だった日と、希望が尊重されないことが繰り返される状態は、分けて考える必要があります。同じ困りごとが続くなら、何を変えたいか、相手が調整に応じるかを具体的に確認できます。
脅しや強制などがある場合に、「満足度は変動するのが普通」と我慢を正当化しないでください。楽しい日があることと、安全や境界線の問題がないことは別です。
仕事などのストレスが関係に持ち越される視点は、スピルオーバーの記事で扱っています。ただし、疲れがあることは、相手を傷つけてよい理由にはなりません。
まとめ
恋愛の満足度は、日々の中でも変動します。2025年の研究では、変動の大きさと全体的な満足度の低さに関連がありましたが、その変動だけで長期的な満足度や関係継続が予測されたわけではありません。
毎日同じ気持ちでいることを目指すより、心地よかった経験と、繰り返し困っていることを分けて確かめてみてください。一回の揺れを最終判定にせず、大切な問題を見過ごさないという、両方の視点を持てます。
参考文献
Scheling, L., Wrzus, C., Weidmann, R., Burriss, R. P., Wünsche, J., Grob, A., & Bühler, J. L.(2025). Within-person variability and couple synchrony in state relationship satisfaction: Testing predictors and implications. Journal of Personality and Social Psychology, 129(2), 407–437. doi:10.1037/pspp0000559